飲酒操船の数値基準は存在した!
呼気1L中0.5mg、ふくそう水域又は遊泳者等の付近を航行する場合は0.15mg。
0.15mgは、道路交通法上の酒気帯び運転の下限だから相当に厳しいとも言える。
ただ、この基準を法として執行可能なのかということについてはちょと疑問もある。
ここから先は、あくまで頭の体操として興味がある人だけ読んでほしい(決して船上の飲酒を奨励するものではありません)
飲酒操船の違法性について:
船舶職員及び小型船舶操縦士法二十三条の三十六に規定があり、「小型船舶操縦者は、飲酒、薬物の影響その他の理由により正常な操縦ができないおそれがある状態で小型船舶を操縦し、又は当該状態の者に小型船舶を操縦させてはならない」とする。
では「正常な操縦ができないおそれ」はどう定義されているのか?それは、同施行規則第九十三条が参照する別表第十一第一号の表の備考2の一に規定があり、何と『「酒酔い操縦」とは、法第二十三条の三十六第一項の規定に違反する行為をいう。』として、循環参照になってしまっている。つまり法令上はこれ以上の基準が存在しない。
数値基準はどのような性格のものなのか?
それでは、この呼気1L中0.5mgとか0.15mgとかの数字は何なのか?
これは、国土交通省から出た「海上交通における飲酒対策について」という文書に記載されている数字なのだ。https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/10/100929_.html
実は、この文書の性格は全く不明だ。告示なら法的拘束力があるし、通達も法令には含まれないが行政の判断基準になるので実質的に縛られる。しかし、よく見るとこの文書、公文書としての番号も振られていなければ、発出者さえ明示されていない。連絡先の課長補佐さんの名前が書かれているだけだ。
本来なら政令(道交法の場合は、同施行令に規定がある)なり、最低でも省令で定めなければならない内容を、通達のかたちで正式に番号を取って公文書で発出すると越権行為になるため、敢えてさらにレベルを落として、一種の意見表明にとどめていると見るべきだろうと思う。つまり、「どのぐらい飲んじゃいけないんですか?ってよく聞かれるので、まあ、このぐらいを目途にしようと思っています。という意見を表明した」という建て付けなのだろう。これでも小型船舶操縦士免許の講習会ではこの数字が参照されて「国民を啓発」できるわけだからなかなか巧妙だ。
現場での運用はどうなる?
取り締まりの実行組織は海上保安庁になるだろうが、政令はおろか、正式の通達も無い状態で検挙にまで至れるのかどうかはかなり疑問(東京都の場合は、東京都水上安全条例施行規則に数値基準が明示されているので警察が検挙可能)。ただ、保安庁さんはその気になれば「正常な操縦ができないおそれ」がないかどうか調べるために任意同行を求めて長時間の尋問を行うなど、実力行使が可能だ。そんなやり方は憲法違反だ!なんて騒いでも結局は時間の無駄になるだけ。それ以前にヨット乗りとして、飲み過ぎは褒められた行為じゃないからね。
したがって本日の結論は、「船の上で飲みすぎは控えましょう!」
これに尽きる。
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