ヨットの電動化が現実味をおびてきた

三井商船さんのWind Hunterプロジェクトって聞いたことあります?
こういうセールで航走する船を作って、水中でタービンを回し、水素を製造しちまおうっていうアイディア。https://www.mol.co.jp/bam/004/

風の強いところでは水中でタービンを回して水素を作って貯めておき、風が弱いところではその水素で航走すれば燃料いらんやんという発想。
で、ここまでは、まあ上手くいったら良いよねーと言う程度の話なんだが…

今年に入って、長崎でヨット(ウインズ丸という、普通の40ftぐらいのヨット)を使った実証実験に成功したとのニュースが入ってきて、ここでは水素の貯蔵に上の図のような水素貯蔵合金ではなく、世界で初めてメチルシクロヘキサンを使うシステムが採用されたと言う。
https://www.mol.co.jp/pr/2021/21112.html
これは地味に重要なニュースで、一種のゲームチェンジャーになる要素を含んでいる。

まず、メチルシクロヘキサン(MCH)で水素を貯められる原理だが、下の反応式を見ていただきたい

トルエンに電気分解で作った水素を付加してMCHにすれば、水素を貯めることができ、MCHに熱を加えれば水素を吐き出してトルエンに戻る(実際は効率の良い触媒を探すことが重要になる)。
気になるのは貯蔵効率だが、一定の体積あたりで貯められる水素の量は、液化水素には遥かに劣るものの、水素貯蔵合金には大きく勝る。
一方で、大きなメリットは、MCHは取扱がそれほど難しくないと言うこと。沸点は101℃で、常温で液体、引火点−3℃は、ガソリン(−40℃)と灯油(40℃)の中間ぐらい。
つまりこれなら、船(我々のような小さいヨット)に積み込むのにさほど抵抗は無いだろう。

MCHから取り出した水素は、燃料電池に使って発電、残ったトルエンは、本来なら引き取ってもらってMCHと交換してもらうのが望ましいのだが、そのような燃料サイクルができ上がるまでは、発電機に入れてこちらも電気に変えてしまうハイブリッドとするのが現実的だと思う。

現在は液化水素が扱いづらいせいで、あまり普及しない水素自動車だが、燃料がMCH化して、普通のガソリンスタンドでもMCHが手に入るようになれば、船もフル電動化する時代が来るんじゃないかな。そうなれば機走中も音が静かで、電気も使い放題ですよ。
 

コメント

  1. O川 より:

    いやぁ、やはり車での実用化はインフラがね…
    既存のGSの救済策として巨額のGS事業者向け助成金でも突っ込まないと。
    ゲームチェンジャーは水素貯蔵技術じゃなくてバッテリーじゃないですかねぇ?(←ヨットの話)

  2. Koji より:

    >>1
    うーん、48時間ぐらいは航走れないと辛いので、バッテリーだけでは相当ハードルが高いんじゃないかなあ。

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