プレジャーボート保険の不思議

最近ホームポートを移したので、元居たマリーナのフリート保険から脱退せざるを得なくなった。新しいマリーナはフリート保険を生成していなかったので、どこか入れてくれるフリートはないかと探し回ったところ、加入条件のゆるいオープンなフリートが複数あったので、それぞれのフリートからと、知り合いの代理店から個人契約ベースで見積もりを取ってみたところ、保険料率には随分大きな違いがあることがわかった。

ここで、フリートとは何かを少し説明したほうが良いかもしれない。
昔はおおらかだったプレジャーボート保険も、90年代に入って、いろんな人が保険を契約するようになって、求償事故が激増し、保険会社が赤字になった。そこで大幅な保険料率の改定が行われたわけだが、一部のヨットクラブやマリーナでは、ほとんど事故も起こさないのに料率が上がるのはおかしい。クラブやマリーナ単位でフリートを生成して、保険をフリート契約とし、事故率に見合った料率にしてもらおうという動きが出てきた。
その結果、現在では、クラブやマリーナ、何とか協会などの単位で、加入資格を限定したものや、オープン加入になっているものなど、さまざまなフリート契約が存在し、それぞれに独自の保険条件や料率が設定されている。

さて、以上を踏まえていよいよ保険料率の比較だ。次の表をご覧いただきたい。

付保条件は、可能な限りで揃えてある。なお、比較のために元居た広島のフリートも入れてあるが、これはもう加入させてもらえないのであくまで参考値。
一見して驚くのは、一般契約よりも料率が高くなってしまっているフリートがあるという事。フリートBは、船体保険料率が39.5/1000と、個人で契約する場合の基本料率25/1000に風水害危険担保特約をつけた28/1000に比べてもはるかに高い。これには驚いた。
フリートAも風水害危険担保特約付きで25/1000なら、一見、個人契約より安いように見えるが、分損の場合のカバー率を70%に下げて表面の料率を下げているだけに見える。
こうしてみると、元居たマリーナの契約者に限定したフリートCの21/1000は相当安い。これは、クローズなフリートで、長らく求償事故がなかったなどの事情によるものだろう。そのせいか、マリーナを出た途端に、強く解約を要請されてしまった。
さらに驚く事は、一番高いフリートBと一番安いフリートDの引受保険会社が同じY社である事。
一方のX社の場合は、フリートAも個人契約も、条件が微妙に違うだけで、コスパ的には同じ程度と思われることから両者の営業姿勢が窺われる。つまり、Y社の方は、あくまでドライに顧客(フリート)を選別して、パフォーマンスの良いフリートには好条件を出し、事故の多いフリートにはきっちり保険料を上げて、嫌なら去っていただいて結構という姿勢なのだろう。

ところで、フリートDは、合計の保険料は個人契約とあまり違わないが、少し保障が手厚いようだ。保険条件も、レース中とその他の免責金額を分けたり、船体、マスト・スパー、セール、エンジンは全て個別に保険金額上限を設定するなどプラクティカルな保険条件になっている。引受保険会社は、近来業容を拡大中の大手生保系の損保Z社。後述の理由でここからはこれ以上詳細な見積を取っていないが、オープンなフリートの中では、十分検討に値すると思う。

さて、自分はいろいろ思い悩んだ末に、結局個人契約することにした。その理由は、この代理店経由でX社と長らく付き合ってきたので、料率にあまり差がないのであれば、そちらの方がいざという時に頼りになるかなと考えた事。さらに、決定的になったのは、この代理店が、「マリーナに船を定繋しているなら、風水害危険担保特約は外しても良いのではないですか?」とアドバイスをくれた事だ。

通常の船体条項では、マリーナ以外に繋留中の風水害によるダメージは担保されないが、特約が無くても、航行中なら漁港などマリーナ以外の場所での事故も担保される。また、航行中の定義では、クルージング中に港に立ち寄って停泊している間は航行中に含まれるのだそうだ(置きっ放しで船を離れる場合はダメ)。
これは知らなかった。自分はずっとマリーナ繋留なのに、何十年も無駄に特約保険料を払い続けてきた(金返せ!)
特約を外した結果、船体保険料が上の表より3/1000だけ安くなり、クローズなフリートCは別として、オープンなフリートに加入するよりは、個人契約の方が安いという結果になった。これでは、フリート契約は意味をなさない。(但、各フリート契約で風水害危険担保特約を外せるかどうかは調べていない)

プレジャーボート保険をフリート契約されている皆さんは、知らない間に一般契約より料率が高くなってしまっていないか、また、プリセットされている特約に無駄なものが含まれていないかどうか、一度点検された方が良いと思いますよ。

コメント

  1. O川 より:

    なんと言うグッドタイミング。
    船籍港が変更になった船舶検査手帳が昨日届き、さて保険も切り替えか… と言うところでした。

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