夏休みじゆうけんきゅう① – パイナップルフレッシュマリンの秘密に迫る

ヨット界隈では知る人ぞ知るパイナップルフレッシュマリン(PFM)という洗剤。デッキやフェンダーの汚れが驚くほど良く落ちると評判だったが、5年ほど前に製造中止になってしまった。このボトルは、たまたまマリンショップの店頭に一つだけ残っていたのをゲットしたものだが、もうひと瓶の三分の一ほどしか残っていない。

そこで、どうせ何処へも行けないこの夏休みを利用して、PFMの洗浄力の秘密がどこにあるのか、調べてみたくなった。もし秘密がわかれば、自分でもPFM(もどき)を調合できるかもしれない。

まずは、しげしげと成分表示を見てみる。
主成分は意外にも合成界面活性剤ではなく、純石鹸(脂肪酸カリウム)だ。それに水溶性溶剤と、アルカリ材、酵素だという。なるほど油に強いのは、この水溶性溶剤のせいか?ドライクリーニングなどで使うグリコールエーテルだろう。アルカリ材はPh調整用。酵素が謎だが、パイナップルの皮の抽出液でも使っているとすれば、タンパク質分解酵素が含まれているかもしれない。
さらに、注意書きにスチロール樹脂に使えないとしてあるのが気になる。スチレン系樹脂を溶かすので有名なのはリモネン。これもパイナップルの皮には多量に含まれている。

ここで物性テストに入る。
まずはPh。リトマス紙による比色で、PFMのPhは8近辺の弱アルカリ性。
比較する意味で、同時にヤマハのボート用洗剤BP-1、作業着洗いに特化した洗濯石鹸(合成界面活性剤)の「Workers」、純石鹸(脂肪酸カリウム)の「ミヨシ石鹸」も一緒に試験した。
BP-1はPh1の強酸性。成分表示から判断して、この洗剤は要するにサンポールの塩酸濃度を薄めたもの(サンポールは9.5%、BP-1は2.5%)。どおりで黄ばみが良く取れるが、油汚れにはあまり強くない。Workersとミヨシ石鹸は、いずれもPh9でPFMとほぼ同じ弱アルカリ性。

次にPFMが発砲スチロールをどのぐらい溶かすのか試してみる。
比較対象は、リモネンと水溶性溶剤の候補であるブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)。

発泡スチロールの板の上に各検体を一滴ずつ滴下する。リモネンは強力。あっという間に発砲スチロールが溶けていく。一方、PFMもブチセロも発泡スチロールの表面に際立った変化は見られない。
もう少し条件を厳しくすることにして、発泡スチロールの切れ端をビーカーに浸して1時間ほど置いてみた。

ちょっと見難いかも知れないが、PFMに漬けた方はカドの部分が丸く溶けていて、やはりPFMは発泡スチロールを溶かす。ブチセロは全く変化なし。したがって、PFMには、純石鹸、グリコールエーテルの他に何らかの第三成分が入っていることがわかる。

その第三成分は、商品名にも入っているぐらいだから、パイナップルの皮の抽出液である可能性が高い。ただ、そんなものは市中では入手困難だし、自分で大量のパイナップルを買ってきて皮をむいて煮たのでは太ってしまう(身の方は食べちゃうよね?)。

本日はこれで時間切れとするが、次回は、第三成分なしのPFMもどき1号と、第三成分にリモネンを少量加えたPFMもどき2号を使って、PFMとの洗浄力の差を検討します。乞うご期待!

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