今年は台風の当たり年で、各地のマリーナにも被害が出ているので、自艇のホームポートである広島観音マリーナ(広島湾)にとって危険な台風のコースを検討してみた。
過去、マリーナに最も甚大な被害を与えたのは、2004年の台風18号である。この時はマリーナのみならず、 広島港や呉港、そして厳島神社にも大きな被害があった 。しかし、上の2つの経路図を見て驚くのは、18号の前に直撃に近いコースでやってきた16号ではなく、逆に遠く日本海を抜けていった18号で大きな被害が出たという事実だ(*1)。
勿論、16号でボディーブローが効いていたところに、18号が止めの一発になったという見方もできるとは思うが、過去に厳島神社に大きな被害(社殿損壊や高潮被害)をもたらした台風は、決まって04年18号のコース、つまり北九州をかすめて日本海に抜けるコースを取ったものであることがわかった。
これら1991年の台風19号や1999年の台風18号に、観音マリーナが耐えられたかどうかについては解らない。というのは、マリーナができる前の出来事だからだ。
一方、港湾への被害があまりなかった99年18号と大きな被害が出た04年18号の違いは、台風自体の大きさと共に、04年18号の方が動きが遅かったために、南寄りの強風の吹送時間が長く、これが高潮と高波を発生させたためだと言われている。 (*2)
また、社殿も鳥居も北を向いている厳島神社が、南に開けている観音マリーナと同じコースの台風に弱い理由だが、いずれの場合も南風の強吹と気圧低下による広島湾全体の高潮が被害につながっていること及び、宮島には社殿裏の尾根筋から強烈な南南西の風の吹きおろしが起こることによるらしい。 (*3)
最後に、これは直近で厳島神社に被害が出た2012年の台風16号のコース、確かに大きな台風ではあるが九州にかすりもしなかったのに、高潮の被害が発生した。これは気を付けて見ておく必要があると思う。
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参考文献等:
文中の台風経路図等は気象庁ホームページの「過去の台風資料」によります。他の参考文献と気圧データ等に異同がありますが、出典が違うものと思われます。
(*1) http://www.cdit.or.jp/ronbun/2005/H16-65.pdf
瀬戸内海沿岸域における台風 0416 号及び 0418 号に伴う高潮・高波浪の被害について – 沿岸センター研究論文集 No.5(2005)
(*2) http://www.mlit.go.jp/chosahokoku/h17giken/program/kadai/pdf/ippan/bos2-01.pdf
高潮・高波浪防災検討について – 中国地方整備局 広島港湾空港技術調査事務所
(*3) http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/nenpo/no48/48b0/a48b0p59.pdf
台風0418号による厳島神社周辺の強風被害について – 京都大学防災研究所年報 第48号B
2018/10/01
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