ボルボのセールドライブを使っている人は、セールドライブのケーシングと一体の、一時冷却水取水口にフジツボが詰まって苦労したことがあると思う。従来の対策としては、こまめに陸揚げして長いドライバーなどを突っ込んでガリガリやるのと、あとはスプレーのMPXを吹き付けるぐらい。前者は金と手間がかかり、後者は全くの気休め。
そういう状況のなかで、電力中央研のおもしろいレポートを見つけた。
https://criepi.denken.or.jp/hokokusho/pb/reportDetail?reportNoUkCode=V11009
つまり、原子力発電所もボクたちと同じことで悩んでいて、いろいろ試行錯誤してわかったのは、わずか5ppmという、かなり低濃度の次亜塩素酸ソーダ水溶液にフジツボをわずか15分さらすと、半数以上が死滅してしまうということらしい。
そこで、これは応用しない手はないと、さっそく実践してみることにした。つまり、帰港する度に、哺乳瓶洗浄用のミルトン(次亜1.1%水溶液)1ccを水2Lに溶いたもの(5ppm)で、ドライブのケーシング内の海水を置換してやるのだ。
この発見をFacebookのフォーラムにドヤ顔でアップしたら、「次亜はステンレスを溶かしますよ」って教えてくれた人がいて、いろいろ文献を当たってみた結果、かなり低い濃度の残留塩素でもステンレス配管に影響することがあり、また、アルミの場合、強いアルカリ環境下に塩素イオンが存在すると、穿孔腐食するリスクがあるとの事。セールドライブに穴が開いちゃったのではシャレにならない。
そこでやってみたのは、希釈溶液のPhの計測。
左から生ミルトン(1.1%)、100ppm、50ppm、20ppm、5ppmの各溶液、左端の試験紙は写真を撮る間に脱色してしまったのだけど、浸した直後の比色では、生でPh11近傍、100倍希釈でPh9、2000倍でPh8を切ったぐらいになり、ほぼ理論値の通りになった。アルミはPh4から8の間ではかなり腐食に強いと言われており、使うのは5ppm水溶液なので影響はあまり無いだろうと思える。
もう一つダメ押しで、このうちの生ミルトン、50ppm、5ppmを使い、一円玉(アルミ)と、五円玉(スルハルにも使われている真鍮)を漬けて、24時間の腐食試験を実施。
結果は、ミルトンの原液ヤバイ。アルミの1円玉は、明らかに縁の方から酸化して来ている。真鍮の5円玉も外観的にはあまりわからなかったが、5円玉を取り除けた後の模造紙に赤い色が落ちていた。なお、50ppmと5ppmについては、いずれの金属も少なくとも外観に変化は見られなかった。
本当は、もっと長い時間やると良いのだろうけど、ミルトンのコップをこのままリビングに置いておくのは、家内が許してくれそうになかったので一旦終了。
実際に使用する際は、5ppmの溶液だし、ドライブはアルマイト加工されているので、生アルミの一円玉に10倍(50ppm)で24時間やって変化がなければ、ほぼ問題無いと思っている。
なお、ケーシングの海水の置換方法だが、一次冷却水系統の海水ポンプ手前のフィルターが、喫水線より15センチ程度上にあるので、ふたを外せば海水吸入側のホースの水面位置が喫水線まで下がる。そこへそろそろと溶液を注入すれば、ケーシングの中の海水は次亜の溶液と置換される筈。
パスカルさんって本当に頭の良いフレンズなんだね!
さあ、これで効果あるかな?
5ppmで本当に効果があるのかどうかは不明だけど、電力中央研のレポートを信じてダメ元でも良いからやってみようというのがこの実験の趣旨。したがって、もしこれを見てやってみようと思った人も、濃度の高い次亜で配管やセールドライブ本体などの装置に悪影響を与えてしまったのでは、全くばかばかしい事になるので是非ご注意下さい。
(2017/4/23)
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