電蝕で脆くなったスルハルが突然もげて浸水したなんていう怖い話を聞くので以前から気になっていた。
日本でボートの電蝕についてまとまった記述があるのは、唯一舵社から出版されている「電装系大研究」という書物で、電蝕についての主要部分の記述は、 筆者の小川さんご自身がネットにアップして下さっている。
これによると、スルハルは全てボンディング(電線で繋ぐ)しなければならず、それによって防蝕亜鉛が働いて電蝕による被害を防ぐことができるとする。
シンプルに考えると独立したスルハルに電気は流れようがないけれども、スルハルには、黄銅(真鍮、銅と亜鉛の合金)が使われていることが多く、黄銅内部で電蝕して亜鉛が抜ける脱亜鉛が起こることがあるという。これを避けるには、スルハルをエンジンブロックにボンディングした上で、充分な防蝕亜鉛を付けて、脱亜鉛を防ぐべきだとのご指摘である。
ところで一方、West Adviser(West Marine Productsの技術解説ページ)には次のような文献が掲載されていた。(WMはリンク切れを起こしていますが、ネットでPDFを見つけました West Marine – “Marine Grounding System”)
スルハルをボンディングすることは一つの対策ではあるが、マリーナの陸電や隣の船の不適切な接地(アース)のために海中には電流が流れているケースが多く、犠牲金属が急激に食い尽くされてスルハルに害が及ぶリスクが大きい。
一番良いのは、スルハルに安全な材質(たとえば青銅)を使い、ボンディングせずにアイソレートさせておくことである。
意見は真っ二つだが、いずれも正しく実行すれば筋の通った解決になっており、中途半端に半分だけ実行すると大変なことになるということだと思う。
立ち返って自艇(デヘラー)の場合、スルハルは一切ボンディングされておらず、「スルハルは全てGL (Germanischer Lloyd)によるテスト済の黄銅(!)が使われています」との事で、耐海水性を高めるためにスズを添加したネーバル黄銅などを使っているのだとは思うが、あくまで黄銅製。
ただ、下手に回路を作ってしまうと、急速な電蝕を引き起こすリスクがあるが、アイソレートな環境にしておく限り劣化は徐々にしか起こらないと思われるので、当面はアイソレートにしたままで、定期的にチェックするというのが現実的 かと思っている。
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