ロープあれこれ

ロープのカタログを見ると、素材としてスパンエステルとかポリエステルタスランとか普段あまり目にしないカタカナが並んでいる。よくわからないので少し調べてみた。

まずは、三つ打ちやエイトロープの素材のスパンエステルとクレモナ。

スパンエステルは、ポリエステル繊維のスパン糸で作ったロープという意味。スパン糸は、元の繊維を一旦綿状の短い繊維(スパンヤーン)にしてから撚り合わせて作った糸で、手触りが柔らかく、滑りにくい。逆に繊維をそのまま引っ張り伸ばして糸状にし、撚りをかけて作る糸は、長繊維又はフィラメントヤーンという。

クレモナは、クラレの商品名で、ビニロン(ポリビニルアルコール繊維)とポリエステル繊維の混紡。混紡というのは、スパン糸を作る過程で、短く切った複数の繊維を混ぜてから、撚り合わせて糸にするやり方。比較的自由に素材の混合比率を変えられるので、用途に合わせた特徴のある糸を作りやすい。スパンエステルは物質名+加工法だが、クレモナは糸の商品名になっている。

因みに、昔からプロの漁師さんが使うロープはクレモナと決まっていた。手触り、適度な重さ、伸び(全く伸びないと切れやすいが伸びすぎると使いにくい)のバランスが良いからだと思う。
引っ張りに強いのは、ナイロンの長繊維で作ったロープだが、あれは手に滑るし腰がなくて取り回しがしにくいように思う。
スパンエステルのロープは安物から上等まであってピンキリだが、鞆の浦の澤村船具店さんのサワセンロープは、殊に風合いやバランスが良く、お世話になっている。

次にダブルブレイドロープで使う素材。
これを書くきっかけになった、ポリエステルタスランは、ポリエステル(長)繊維をタスラン加工した糸で作ったという意味だそうだ。タスラン加工とは、長繊維の表面を毛羽立てるような特殊加工のことで、長繊維のままだと滑りやすい欠点が克服できる。
ダブルブレイドのカバー素材は殆どがポリエステルで、長繊維をそのまま使うか、タスラン加工して使っているものが多いが、風合いを出すためにスパンエステル(ステープルも同じ意味)や他のハイテク素材との混紡でできているものもある。

中芯には、ポリエステル長繊維かダイニーマなどのハイテク繊維、その混紡などが使われている。
ナイロンは特殊用途。シートやハリヤードなどには伸びては困るので使われないが、ブラックロープという商品名で売られているドックラインの専用ロープは、中芯がナイロンで外皮はポリエステルタスラン。ナイロンは破断前に18%ほども伸びるので、急激に船体にかかる力を吸収してくれるメリットがある。

一般的にハイテクロープは、使われているハイテク繊維の商品名で呼ばれていることが多い。ケブラー、ダイニーマ、ベクトランなど。

ただ、素材表記に単にダイニーマと書かれていても、ダブルブレイドロープの場合はダイニーマが使われているのは中芯だけで、外皮はポリエステルになっている。良心的な表記は、外皮:ポリエステルタスラン、中芯:ダイニーマのようにきちんと両方書いてある。
なお、ハイテク繊維の単芯編みのロープもあり、これは太さに対して恐ろしく強度が高いが(同じ太さならワイヤーより引張強度は高い)、堅いし、滑るしクリートに掛かりにくい。
レーサーの人たちは、ハリヤードなどにもハイテク繊維の単芯編みロープを使い、クリートの掛かる部分だけカバーを被せる(又はダブルブレイドのカバーを、必要なだけ残して剥いてしまう)ことなどするようだが、ハイテク繊維は擦れに弱く、紫外線にもあまり強くないので、我々クルージング派にはそこまでして軽量化する意味はあまり無いと思う。

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