ハウスバッテリーのリチウム化で留意すること

昨年バッテリーをリチウムバッテリー(正確にはリン酸鉄リチウムバッテリー、以下LFPと呼びます)に換えた際、事前にネットなどを調べて、よくよく準備したつもりだったのだけど、実際に取り掛かってから右往左往しているうちに、機器の構成がどんどん複雑化してしまった。今振り返れば、もうちょっとスマートにやれたのでは無いかとも思うので、その辺りの反省も含めて、以下にまとめとして載せておくことにした。

目的に合わせたサイズの検討

実はサイズを決めるのが一番難しい。バッテリーの容量が小さくてよければ、システムも簡素化でき、設置も簡単ならトラブルも少ない。要はあれも動かしたい、これも動かしたいという煩悩をどこまで抑えられるかと言う問題だ。

  1. 使用用途が電灯と航海計器だけの場合なら、1日あたりの消費は30-50Ahぐらいだろう。よって、バッテリー容量は100Ahもあれば充分
  2. 冷蔵庫を終日運転するなら、プラス50Ahぐらい。さらに、インバーター経由で電子レンジやティファールを動かすと瞬間的には最大1200w(100A)ぐらい流れるが、こちらは稼働時間が短いので、1日を均せば、使うのは50Ahぐらいか。これらを含めて、200Ahぐらいほしい。
  3. さらに欲張ってエアコンまで稼働させたい場合、時間あたり5Aぐらい消費するので、夜間8時間の稼働だけでも、最低でも400Ah以上必要(上は青天井)。

しかも、バッテリーの容量が大きくなれば、どうやって充電するのか問題が発生する。
因みに、

  1. 100Wのソーラーパネルの1日の発電量は、だいたい300Wh(25Ah)ぐらいだから、100Ahのバッテリーを充電するのに4日ぐらいかかる。
  2. エンジンからの充電は、うちの船の場合で言うとオルタネーターの発電容量は60Ahだが、実際の貯まり方を見ると、効率は8掛けぐらい。つまり、8時間ぐらいエンジンをフルに回すと、380Ah分ぐらいは貯められるかなあという感じ(アイドリングでは全然ダメで、2000回転以上回さないといけない)。
  3. 陸電からのチャージは、容量が30Ahのチャージャーなら24時間で600Ah分ぐらい貯められるが、クルージング中に陸電のあるマリーナに一晩泊めたとしても、翌朝まで12時間として貯まるのは300Ah分ぐらいになる

つまり、いくら大きなバッテリーを積んでも、1日に使える電気は300Ah/日ぐらいが限界かなあと言う感じがする(もちろん、オルタネーターをよほど容量の大きいものに換えるとか、デッキや屋根をソーラーパネルで埋め尽くすとかいう手はあるかも知れないが)。

因みに、自分の船は2つで690Ahという巨大なバッテリーバンクを設置してしまった。自分のマリーナを満充電で出航すれば、真夏でもぎりぎり2日ぐらいは陸電の無いところでもエアコンをつけて過ごせて、3日目には何とか電気のあるところを探して泊めるという作戦なのだが、正直、それなら、真夏は陸電のあるマリーナにしか行かないと割り切ってしまうのと、あまり変わらないような気もする。

比較的シンプルな構成

というわけで、まずLFP一個の比較的シンプルな構成を考えてみる(図ではヒューズを省略していますが、適当なものを別途入れてください)。

この場合に、単に鉛電池をLFPに置き換えて、エンジンからメインバッテリーと並列に繋いだLFPに充電するのではダメなのか?という問題。これは「実際にやっているが何の問題もない」と主張される方も居られるのだが、常識的に考えると、次の理由であまり好ましいとは思えない。

  1. まず、最近の新しいエンジンに使われているスマートオルタネーターでは、燃費向上や排ガス抑制のために、エンジン高負荷時に充電電圧をオルタネーター側で低く(12.5vから13.8vで変動)調整してしまう。LFPは、充電電圧が14vと高いので、これでは充分に充電されない可能性がある。
  2. 逆に、従来の旧式のオルタネーターの場合は、常時14vで電圧をかけ続ける。鉛バッテリーなら満充電に近くなると抵抗が増えて流れる電流が自動的に調整されるが、LFPの場合、14vの電圧を延々と掛け続けると過充電のリスクが生じる。LFPにはそれを避けるためのBMS(Battery Management System)が内蔵されているものの、これだけが最後の砦なので、万一BMSにトラブルが生じると、バッテリーを破損したり最悪発火の危険性さえある。

LFP用の走行充電器を設置する場合は、エンジンのオルタネーターからの配線をメインバッテリー(鉛電池)だけに接続する。エンジンが始動して電圧が一定以上になると(Renogy社の充電器の場合12.7v)走行充電器がメインバッテリー(鉛電池)の系列から電気を吸い出し、14vに昇圧した上でサブバッテリー(LFP)に電気を送る仕組みだ。

最小限の構成

ところで、もっと簡単な機器の構成ではダメだろうか?もし、1日の消費電力が50Ah以下というような場合で、ソーラーパネルが相応に大きければ、走行充電も陸電からの充電も行わない、超シンプル構成で稼働できるかも知れない。なお、この場合も、ソーラーコントローラーは入れておいた方が良い。機能は、夜間の逆流防止、過充電防止、効率的な充電の3つ。因みに、夜間の逆流防止にはパネル側の逆流防止ダイオードが、過充電防止はLFP側のBMSが入っている筈なのだが、それでも夜間の逆流でバッテリーが放電した話は良く聞くし、LFPを効率的に充電するには、コントローラーの電圧・電流制御は必須だ。

なお、こういう構成の場合、従来の鉛電池によるバッテリーシステムを一切触らずに、インバーター付きのポータブル電源とソーラーパネルだけ付加するのも現実的かもしれない。それなら、電子レンジもティファールも使える。

欲張った構成

敢えて悪いお手本を載せておくと、我が艇「あかね」の場合。
エアコンを、陸電のないところで稼働できないかと欲張った結果、バッテリーバンクは460Ah + 230Ah、合計690Ahという巨大なものになってしまった。

そうすると、これを充電するためには、陸電、ソーラー、走行充電と総動員することになり、それらが相互干渉しないための工夫が必要になる。しかも、後でわかった事だが、LFPは、保管時のSOC(State of Charge、充電率)を50-60%に留める必要があるとの事(フル充電で置いておくと寿命が縮まる)。うちの船では、冷蔵庫が常時稼働しているので、ACチャージャーを切った状態では充電・消費のバランスを取るのが難しく、苦肉の策でACチャージャーとは別系統で、陸電から12V電源を取り出してこれらを稼働させる仕組みを付加することになった。

その結果、あらゆるところにスイッチやセレクターやリレーが付き、上の模式図ではかなり省略したが、全部書き出すと下の図のようになる。

もう、こうなると何が何やらという感じになり、配線ミスや操作ミスも心配だし、どこかが動かなくなった時には、問題箇所を探し出すのが大変だろうと思う。という事で、あまりお勧めできるようなものではない。

お勧め構成

ここで、もし一からやり直せるとすれば、こういう構成が良いのではないかという例を示す。

先述のあかねの構成との違いは、サブバッテリー2系列のうちの1系列が鉛電池になっているところ。なお、この図ではLFPは1本だけになっているが、同じメーカーで同じサイズなら複数本を並列に繋いでも良い(バラバラだとまた調整充電の機構などが必要になるので面倒)。また、ACチャージャーは鉛電池の系列に、走行充電器はLFPの系列のみに繋いでおき、二つの系列間に、「1(鉛電池のみ)」、「2(LFPのみ)」、「1+2(Both)」を切り替えられるセレクタースイッチをつける。

その意味は、

  1. ホームポートでの係留中、鉛バッテリーなら陸電を繋ぎっぱなしにしても問題無いから、セレクターのポジションを「1(鉛電池のみ)」にして、常時稼働の冷蔵庫などは、こちらで稼働する。LFPはSOCを50−60%に維持した状態で切り離しておき、出かける時だけ、事前にセレクタースイッチを「2(LFPのみ)」のポジションにして、LFPを100%まで充電する。
  2. 巡航中は、セレクタを「2(LFPのみ)」にして、サブ2系列のみ使用する。エンジンからは走行充電器でサブ2系列(LFP)に充電する。なお、サブ1系列にも充電したいときは、セレクターを「1+2(Both)」のポジションにすれば、LFPの方が電圧が高いので、鉛電池に優先的に充電され、その後LFPに充電されるだろう。

こういう構成にすると、あちこちにごちゃごちゃとスイッチやリレーを取り付けなくても、割合シンプルな操作(セレクタのポジション)だけで完結するので、配線ミスも操作ミスも出にくいのではないだろうか。うちの場合はもう手遅れなんですけどね。

と言うわけで、これからリチウム化に手をつける方のご参考になれば幸いです。

 

【ご参考】
「あかね」が去年LFP化した時のドタバタの様子:
https://yachtakane.com/archives/litium.html
https://yachtakane.com/archives/litium2.html
https://yachtakane.com/archives/litium3.html
https://yachtakane.com/archives/litium4.html
https://yachtakane.com/archives/litium5.html
https://yachtakane.com/archives/litium6.html

コメント

タイトルとURLをコピーしました