来島海峡は難所で知られ、潮の流れによって左右の通行が逆になる、「順中逆西」ルールなどもあり、最初から避けている人も多いと聞くが、自分はわりあいしょっちゅう通っていて、別に怖いと思ったこともない。
どうも、嫌っている人は、「順中逆西」ルールを難しく考えすぎているのではないかと思う。
まず、ルールのおさらいから:
しかし、このルールは、50m未満の船舶には適用されない。自分はこれを、守らなくても構わないという意味ではなく、却って邪魔だから、大きい船の邪魔にならないように、「順中逆西に依らず、端っこを通りなさい」と言う意味だと解釈している。
まず、落ち着いて考えてみよう。来島海峡は、最大潮流が8kt以上もあるようなところだから、頑張っても7ktぐらいしか出ない我々の船が、逆潮で通峡することは不可能だ。したがって、ここを通る時は必ず連れ潮である。
そして、連れ潮で通峡する限り、本船は「順中逆西」ルールに従うので、対航船は西航路を、同航船は中航路を通る事になる。
そこで、自船は必ず広い方の西航路の端を通るということにすれば、全ての本船は、潮に逆らって西航路を逆航してくることになるのだ。
絵で見るとこんな感じになる。
本船は、逆潮で航路端に寄りたくないから、必ず広い航路の真ん中あたりを、よたよたとやってくる。自船は、本船と充分な距離を取って、航路西端を連れ潮に乗ってすれ違えるので、これは危険が殆どない。
チャートで見るとこんな感じ:
また、チャートの推奨コースの通り、本船は、必ず馬島と小島の間を通って出ていく(又はやってくる)が、我々のような小舟は、小島と来島の間を抜けて、波止浜沖から大角鼻を目指すのがお勧めだ。
なお、最後のところで、わざわざ来島海峡航路入口の2番ブイに近づいていくのは、中途半端なところで、航路から出て来て四方に散っていく船や、四方からこの入口を目指す船たちと、ばらばらにミートするのは危ないので、この位置で視界の限りの出船と入船を確認してから、次の作戦を立てる為だ(通常はこの位置で最短距離を北へ横切ってしまい、本船航路を避ける事が多い)。
この航法なら、航路の中にいるのは、来島海峡大橋の下の1マイル足らずに過ぎない。
チャートを拡大するとこんな感じ:
本船は、航路端に寄ってくることはまず無いから、自船は、むしろ航路端に寄り過ぎない方が良い。
今治沖からアプローチするとすると、「来島白石灯標」と、「来島海士瀬灯標」という2つの右舷浮標があるので、これを目印にする。来島海峡大橋の橋脚も航路西端よりは、さらに西側にあるが、橋脚付近は潮が乱れているので、近づきすぎないように充分に離して通過すべきだ。
最後に、来島と小島の間には、小島から延びた暗礁がある。「来島中磯灯標(左舷標識)」という立派な灯標があるので、間違ってもこれの北側へ行ってしまわないようにする。
これさえ、守っていれば、船折瀬戸で小型の貨物船とすれ違ったり、追い抜いたりされるよりは、よほどリラックスして通峡できるように思う。
コメント
その昔、海技試験のために勉強した来島海峡ですが未だに通ったことがありません。ヨットで瀬戸内を巡ったときも、心のなかで避けていたため別ルートにしました。このガイドはヨット向けに秀逸で、なるほどこれなら行ってみようかと。いや、やっぱりヤメときましょうか?!ビビリなので。
>>1
このルートだと、通峡中は、全く冒険的要素はないと思います。むしろ航路出入り口付近で、出入りする本船をかわすのに一番気を遣いますが、そちらは、備讃瀬戸や浦賀水道の方がよっぽど忙しい感じがします。
山本さん
>>この航法なら、航路の中にいるのは、来島海峡大橋の下の1マイル足らずに過ぎない。
小型船舶は、航路通行義務はないものの、航路を通行する際は、決められた方向に航行する義務が免除されているわけではないと承知しています。完全に航路の外を通行するのでない限り、航路の逆航で、違反となると思われますが、いかがでしょうか。
>>3
海上交通安全法第3条第1項(第4条と施行規則第3条も)をご覧ください。
法律の規定は、「航路をこれに沿わないで航行している船舶…は、航路をこれに沿つて航行している他の船舶…を避けなければならない。」です。
なお、もう少しご説明しておきますと、海上交通安全法の規定では、全長50m未満のの船は、航路に沿って航行する義務が無い(その代わり航路に沿って航行している船は全て避けなければならない)とはいえ、航路に沿って航行してはいけないという規定も無い訳です。
しかし、もし脚の遅いヨットが、順中逆西ルールに則って、狭い中水道を航路に従って航行した場合、厳密には、航路権が発生して、追い越し禁止などのルールが適用されてしまいます。そんなことになったら、本船の人たちにすごい迷惑になると思いませんか?(法6条の2および施行規則5条の2参照)
>>4
海上交通安全法をよく読んでみると、確かに山本さんの指摘の通りです。山本さんの推奨するコースは、同法第20条1項一の「西水道を航行して小島と波止浜との間の水道へ出ようとする船舶又は同水道から来島海峡航路に入つて西水道を航行しようとする船舶は、順潮の場合であつても、西水道を航行することができることとする。」に該当することがわかりました。小型船舶は、中水道の追越禁止の規定が適用されないように配慮すべきとの考えは、参考になりました。
大昔、船舶免許の講習で習ったことを、勘違いしていたようですので、この機会に、よく整理して調べてみます。