燃料タンクのスラッジは頭痛のタネ

ヨットはエンジンの稼働率が低いからどうしてもタンクの中の燃料(軽油)が滞留しやすい。石油製品は、出荷時点では微生物などいるわけもないが、流通過程で混入したり燃料タンク内で結露したりして水分が存在すると、タンク内で微生物(藻のようなもの)が繁殖することがある。10年も経てば大体どの船もタンクの底にはそれで出来たスラッジが溜まっていると考えた方が良いという説もあるほどだ。
タンクの底にたまったスラッジは、荒天のときに限ってタンク内に拡散され、フィルターやFuel pipeを詰まらせてエンジンを止める、頼りたい時に限ってエンジンが不調だというのは、何も偶然ではない。一種の必然だと言える。
これを防止するのに最も有効なのは、Biociide(殺生物剤)を入れておくことで、米国ではBiobor JFなどがポピュラーのようだ。(写真はBIOBORのHP: https://www.biobor.com/products/biobor-jf-diesel/ から)

しかし、これが日本で手に入らない。個人輸入すれば良いと思うでしょう?ところが、この製品は(他社の添加剤も同じ)危険物ということになっており、航空便が使えないのでどこのショップでも日本向けには送って貰えないのだ。

日本で唯一手に入るのは、STA-BILという添加剤(写真は、マリンショップ児島さん: https://www.mskojima.yokohama/?pid=136397992)。

但し、これらの製品は成分や狙いが全く違う。両方のSDSを手に入れたところ、BIOBORの方は、主成分(95%)が、2,2’ – (1-methyltrimethylenedioxy) bis – (4-methyl-1, 3, 2 – dioxaborinane) と、2,2’ – oxybis (4, 4, 6 – trimethyl-1,3, 2-dioxaborinane) という、名前を聞いても構造式を見てもチンプンカンプンだが、ともかく中にホウ酸の構造が組み込まれているようだからきっと毒に違いなかろうというもの。

一方のSTA-BILの主成分は、5%以下のナフタレンが入っている以外は、ほとんどが炭化水素で、ナフテン系40%以下、キシレン25%以下、ナフサ10%以下、エチルベンゼン5%など。
ナフタレンはご存知衣類の防虫剤だから、幾分効果はあるのだろうけれど、主な有効成分はSDSに記載されない鼻グスリにあって、燃料中の水分をできる限り分散させて、結果的に水分がなくなれば微生物もいなくなるというものだと思う。

これだけを見ると、後者は今イチかということになるが、ここでもう一つ考えなければいけないポイントとして、猛毒で皆殺しにすれば安心なのかという点がある。もし、既に微生物が相当はびこってしまっている場合、死んでしまった微生物はタンクの底に堆積してしまうだろう。むしろトラブルは起こりやすくなるかもしれない。また、後者では、増えた微生物をすぐに退治するのは難しいだろう。
そうだとすると、結局のところ、一旦タンクを物理的に綺麗に掃除してから、添加剤は予防に使うしかなく、そういう意味ではどちらの製品でも変わらないかもしれない。

などなど、いろいろ悩んでいたら、面白いものを見つけた。

製品名をHUM-BUGという。
要は燃料に微生物が繁殖しているかどうか調べるための検査キットだ。
もしこれが機能するなら、微生物がいればタンクの掃除、いなければ安心して微生物の繁殖防止剤を使うという選択ができるが…
このチラシを端から端まで読んでみたが、どこにも使い方が書いてない。何回分なのかもわからない(4千円近くするのに一回分だったら痛いなあ)けれども、悪いクセで、むくむくと人柱精神が湧いてきてしまい、ついついポッチしてしまった(しかもこれは日本に送れるそうだ)。
今月中には到着すると思うので、早速検査してみますよ。楽しみだなあ。

ご参考:
 BIOBARのSDS: https://www.biobor.com/Biobor-Resources/msds/SDS-BIOBORJF-GHS_EU-rev-7-18.pdf
 STA-BILのSDS: ftp://69.2.51.153/pub/MSDS/289555_DieselStaBilSDS.pdf (FTPして下さい)
 HUM-BUGを売っているところ: https://amzn.to/383m5aX

コメント

  1. redsun より:

    私はエンジンの不調で燃料タンクを外して、チェーンとウエスを使って清掃しました。結構汚れているものです。夏は燃料満タンで結露を防げば、10年は大丈夫なので添加剤は考えていませんが、バクテリアだったんですね、ビックリです。

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