プロペラ – 帆走時のギアの位置

フォールディングプロペラは、帆走中ギアを後進に入れて羽を閉じて航走するのが普通だが、そのままギアを入れっぱなしにしていると、たとえ羽を閉じていても航走中にわずかに回転し、ギアが中途半端な位置で噛み合って中立に戻せなくなる場合があるのだそうだ。

小型の舶用ディーゼルに使われているクラッチは、通常、コーンクラッチ(円錐クラッチ)か、メカニカルクラッチ(湿式多板クラッチ)のいずれかで、機関を停止したまま帆走する場合の操作について、ヤンマーの技術資料 YMTQTB11-017(何故かJ109協会の技術資料ページにPDFが置いてあった)には次のように記載されている。

A. コーンクラッチの場合

  1. 固定翼の場合は中立(ギアを入れっぱなしにするとギアが壊れる)
  2. フォールディング等は、後進に入れて羽を閉じたら中立に戻す

B. メカニカルクラッチの場合

  1. 固定翼の場合は中立(ギアを入れっぱなしにするとギアが噛んで始動できなくなることがある)
  2. フォールディング等は、後進に入れて羽を閉じたら中立に戻してもそのままでも良い

これを見ておやっと思った人がいると思うが、最初に挙げたフォールディングペラの事象は、上記資料のB-2に相当し、ヤンマーさんが、メカニカルクラッチの場合は、後進に入れっぱなしで良いと言っているのは、羽がたたまれたプロペラは回転しないと考えての事だろうが、実は少し回転してギアを噛んでしまう事があるということだ。

自分はうっかりギアを入れたままエンジンを掛けてしまうのを避けるために、一旦後進に入れて羽が閉じるのを感じたら、すぐ中立に戻すようにしていたので、結果オーライだったようだ。

ところでこの問題、フォールディング・フェザリング派よりは、固定翼派にとってより深刻だ。

帆走中、ギアを中立にして固定翼を回転させておくか(カラカラと回転音がうるさい)、後進に入れて固定しておくか(抵抗がとても大きい)は、よく議論になっていたが、これははっきりと結論が出たと言えるだろう。因みに、最近手に入れた帆船日本丸・海王丸のマニュアルによると、日本丸は固定翼で(海王丸はフェザリング)帆走中はギアを中立に保っている。軽風時にプロペラが停止状態から遊転を開始すると速力が 1 – 2 kt 増加するというから、その意味でも、固定翼の場合はギア中立が唯一の選択肢となる。

なお、固定翼派から見ると、フォールディング・フェザリングペラは、「高い」、「機走で遅い」、「バックが効かない」の三拍子揃っている(!)という事だろうが、Yachting Monthlyが2009年に実施したテストによると、レーサー専用の2枚翼フォールディングはともかく、最近のフォールディング・フェザリングペラは、前後進共に固定翼ペラと遜色ないか、凌駕するものさえあるようだ。
回転音が嫌いならばそれも一つの選択かも知れない。

コメント

  1. O川 より:

    やはり究極的には「使わない時はしまっておく」なんでしょうなぁ。
    https://forums.sailinganarchy.com/threads/retractable-drive-systems.181394/

    • Koji より:

      これ、本当にやってた人がいるんですよ。野本先生の「春一番II」。誰も追随する人がいなかったのはどうしてなんでしょうねえ。造船コストとかの問題なのかなあ。

      • O川 より:

        げぇ!春一番は実艇も何回か目にしてるのに知りませんでした!l
        やはりコスト>メリットなんでしょうなぁ。
        新艇買う時に25万円のオプションなら付けるかも。
        30万円なら一晩考えてコイントス。
        35万円なら付けないかな?

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