ハイブリッドのアンカーロードが採用しにくい理由

アンカーロードは、オールチェーンよりも、チェーンにロープを繋いだハイブリッドの方が、チェーンがロープに置き換わる分だけ軽いに決まっているが、それだけではなく、最近はハイブリッドの方が性能的にも優っているというのが定説になってきた。
え?何、今どきオールチェーンなの?そんなの重いだけじゃん!とか言われると悔しいけれども、それでもこっちには改装できない事情というものもあるのだ。

写真は、自艇のウインドラス。

ウインドラスは、水平軸のタイプが、デッキ下チェーンロッカーの中に設置されている。セールボートでは、バウデッキにはできるだけ突起物を置きたくないので。このタイプが一番多い。

もう一つ、セールボートでよく採用されているのは垂直軸の薄いタイプ。

これも薄さ最優先の設計。

なお、垂直軸のウインチには下の写真のようにチェーンとロープ両方に使えるものもあるにはある。上のドラムがロープ用、下がチェーン用だ。

しかし、これは実際の運用を考えれば、そうは上手く行かない。

このシステムの場合、チェーンはジプシーを180度噛んでウインドラスの前部分に開けた穴から、自重でチェーンロッカーに落ちていくが、ロープ部分は、ドラムに最低一周巻きつけて後方に引かなければならない筈だから、繋ぎ目の部分で、どうしても掛け替えが発生する。

抜錨のために、ロープをこの上半分のドラムで巻いていくと、ロープは後部デッキ上に溜まるだけで、ウインドラスより前方にあるロッカーに直接入れるのは不可能だ。
そこで、ロープを揚げ切ってチェーン部分が現れたら、一旦仮留めしてロープをチェーンから外し、今度はチェーンをジプシーに噛ませてから穴を通し、自重でロッカーに落ちるようにセットし直して再開するという段取りにせざるを得ないのではないか?

付け替え時にうっかりしてアンカーとチェーンをレッコしてしまったり、付け替えにもたもたして吹き流されたりしないんだろうか?というのも心配だ。

なお、モーターボートは、デッキに水平軸のウインドラスを設置していて、これは使いやすそうだ(この船はジプシーがロープ専用だが、両用のものも一般的)。一番の違いは、チェーンロッカーがウインドラスの後方にあることで、これなら、巻いたロープはどんどんロッカーに放り込んでいき、チェーン部分が出てきたらそれをジプシーに掛け替えるだけでチェーンはロッカーに落ちていくだろう。

でも、こいつをセールボートのバウデッキにドカンと据えるのはちょっとご勘弁だ。

オールチェーンからハイブリッドに変えれば、50kgも減量できるのだから、何とか良い方法(運用も含めて)を考えたいのだが、今のところ現実的な案が思いつかない。皆さんはどうされているのだろう?

コメント

  1. O川 より:

    垂直軸のハイブリッドタイプは、今の今まで「聞けば何か面白い仕組みがあって、シームレスに引き込めるのだろう」くらいにしか思っていませんでした。
    そうか、そういう物はなかったのか…

    • Koji より:

      例えば、垂直2軸としてジプシー2つで挟み込むような構造の、ロープ・チェーン兼用ウインドラスなんて考えられないこともないですが、コストも上がるし、市場規模も小さいので、まあ誰も開発してくれないでしょう。

  2. Takeyvr より:

    以前使っていた垂直軸薄型のLofransのX1のハイブリッドジブシーはチェーンとロープの両方に対応していて、ロープも問題なく引き込むことができていました。

    • Koji より:

      情報ありがとうございます。その場合、垂直軸のウインドラスとチェーンロッカーの位置関係はどうなりますか?ウインドラスの前側にチェーンロッカーでしょうか?ロープを引く際に、ロープにテンションを掛けないでも、180度だけジプシーに噛むだけで、ロープが自動的にチェーンロッカーに落ちていくと言うことなのでしょうか?

  3. Takeyvr より:

    はい、ウインドラスの前側がチェーンロッカーになり、巻き取られたチェーン・ロープは180度ジブシーに噛んでチェーンロッカーに垂直に落ちていきます。
    このリンクの3番が私が使っていたセットアップに近いです。
    https://www.practical-sailor.com/sails-rigging-deckgear/anchor-lockers-part-i

    全くテンションがない状態で試したことはありませんが、常に緩くテンションがかかった状態(ロープとチェーンの自重)で巻き取ると、ロープもチェーンもチェーンロッカーに落ちていくようになっていました。

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