小鳴門は初見殺し

先日また小鳴門で座礁事故があったようです。瀬戸内のセイラーなら、軽く底を擦ってしまった程度まで含めると、結構たくさんの人がやらかしてます。

というのは、ここ本当に紛らわしいんです。

まずは、チャートを見ていただきましょう。赤の線は、仮に徳島から小鳴門を抜けるルートを引いてみたもの。チャート中央部上の撫養港口灯標はすぐ見つかるし、これは左舷灯標なので標識を左舷にみて通過するのですが、まあうっかり左側を通ったとしてもすぐにどうという事はありません。

問題はこの次の中瀬灯標です。これは右舷灯標なので左側を通らなければなりません。ところがです。撫養港港口灯標から中瀬灯標の方を見ると、右側が広く開けていて何にもなく、逆に左側(航路側)はすぐそばに岸壁が控えていて、うっかり右側を通りたい誘惑に駆られます。

しかし、この標識のすぐ北側は中瀬という暗礁で、さらに写真右奥の何にもなさそうに見えるところは、千石洲という浅瀬になっています。

まずこれが最初のトラップですが、さらにもう一つのトラップが、この標識が左舷・右舷灯標だという事なんです。

チャートの灯標マークの頭についているトップマークを見てください。撫養港港口灯標の頭には四角形、中瀬灯標の頭には上向きの三角形が付いていますね。これはそれぞれ左舷標識、右舷標識のトップマークです。特に右舷標識のトップマークは北方標識の三角形を2つ重ねたトップマークとよく似ているので注意が必要です。まあ、左舷標識は緑色、左舷標識は赤色に塗ってありますからうろ覚えでも間違えることは少ないのですが、問題は、右を通るか左を通るか、通行方向によって反対になっちゃうって事です。

そもそも、港の入り口では、港の中が水源(上流)なので、右舷に赤い灯台を見て入港(Red Right Return)がいつもの習慣で、間違うこともないと思うのですが、小鳴門海峡ではどちらが水源なのでしょうか?これについては、「瀬戸内海では神戸港を水源(一番上流)とする」と決められていて、海上保安庁のホームページにも載っています(因みに日本列島全体では与那国島)。

したがって、小鳴門ならば、瀬戸内側から徳島方面へ抜ける場合は下流方向へ向かっていることになり、赤と緑は逆、右舷標識(赤灯標)は左舷に見て航行、左舷標識(緑灯標)は右舷に見て航行することになります。”Red Right Return” だけを覚えていたら、えーっとどっちだっけ?って迷ってしまいそうですね。

せめて、中瀬灯標を南方標識に(トップマークは下向き三角が2つ)、撫養港港口灯標を北方標識に(トップマークは上向三角2つ)にしてくれれば、紛らわしさが減るのになあと思うのですけれども。

これらは、瀬戸内をホームグラウンドとする自分たちには良く知られた事ですが(痛い目にあった結果という人もいるかも)、他地域の方々がこちらに来られる時には、くれぐれもチャートをよく確認して通っていただきたいと思います。なお、蛇足かもしれませんが、ちゃんと転潮時間を調べた上で広い鳴門海峡を通る方が、狭い水路が連続する小鳴門より、自分は易しいように思います。

 

【追記】

この記事を書いている最中に、大分県で濃霧の中、ヨットが砂利運搬船に真後ろからぶつけられて沈没し、乗員がお亡くなりになるという酷い事故が報じられました。犠牲者の方のご冥福をお祈り致します。

ヨット関係のフォーラムではAIS発信機搭載の必要性が指摘されていて、その通りだと思いますが、それに加えて、レーダーリフレクターも検討してみるべきだと思います。

FRPのヨットは殆どレーダーに映りません。

だからと言って、あんなアルミ製で角が尖ったものをマストにぶら下げたらセールを痛めるじゃないか?と言われそうですが、形状や材質にも工夫されたものは売られています。

以前このブログでも取り上げていますのでご参考まで。
https://yachtakane.com/archives/26108145-2.html

 

【ご参考】

文中に、標識、灯標、灯浮標などの用語が出てきますが、標識は航路標識の略で、灯台、灯標、灯浮標等の全てを含みます。そのうち、固定されているのが灯標(航路標識灯標)、浮いているのが灯浮標(航路標識灯浮標)です。 https://www.kaiho.mlit.go.jp/soshiki/koutsuu/toudai/shurui.html

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