セールドライブのゴムカバーがすぐ剥がれて取れてしまうのは、ヨット乗りの世界共通の悩みのようで、”sail drive & cover & adhesive” あたりでググってみると、ヨット関係のフォーラムでのお悩み相談がたくさん出てくる。そこで、それらの中でお勧めされている接着剤を片っ端から拾ってみると次の表のようになった。
お勧めされている接着剤は、ほぼネオプレン系、ウレタン系、変成シリコーン系の3種類。エポキシやシアノアクリレート系(アロンアルファなど)は、強いが硬すぎて脆いので向いていないということなのだろう。
一方、これら3種類の接着剤にもそれぞれ強味と弱みがある。
まずは、ネオプレン系。定番のボンドG17がこれ。
昔からあり、ネオプレンゴムを溶剤で溶いたもので溶剤が蒸発してゴムが硬化する。ゴムをくっつけるのだからゴムでというのは自然な発想。硬化後も柔軟で粘りがあるが、接着力自体はそんなに強くない。また、コニシのカタログでは、耐水性は優、良、可、不可の4段階中2番目の良になっているが、実際に使用している感覚では、水が侵入するとすぐに剥がれてくる印象がある。
同じ系統だが、3MのSuper Weather Stripは、自動車の外装に使うゴムと金属(FRPも硬いのは同じ)の接着専用に開発されたもので、耐水性に優れているという。
次にウレタン系。シーカの#291や3Mの#5200は定番中の定番。いずれも一液性で空気中の湿気で硬化する。ボートのハルとデッキの接着に使うぐらいだから、強度と耐水性には疑いの余地がないが、フォーラムの投稿にはハル側との接着は良いがゴム側との接着が悪くて外れてしまったという報告があった。
あと、英国で売られているBISONITEという2液ウレタンを推す声があったが、日本では入手困難なので、これは外しておく。
最後に変成シリコーン系、これもゴムへの接着力は製品によってまちまちのようだ。rekaというメーカーのS78という変成シリコーン系接着剤が、”recommended for the saildrive rubber on your BAVARIA yacht”として売られているのは注目に値する(https://www.svb24.com/en/bavaria-adhesive-for-saildrive-rubber.html)。
どうも、ゴムによく付くネオプレン系はハルへの接着が弱く水にも弱い。一方、ウレタンや変成シリコーンは、ハルへの接着強度が高いが、ゴムに付きにくいというのが定説のようだ。
ここで、思い切ってセメダインの接着相談センターさんに問い合わせてみた。とても親切にご対応いただき、同社製品で第一選択は何とウレタン系のUT110だと教えて頂いた。
カタログに製品試験結果が出ている。
この表は細かく見ていくと面白い。同じ変成シリコーン系でもゴムにある程度付くものと全く付かないものがあることがわかる。また、合成ゴム系はゴムの側には良く付くが接着される側の硬いものへの接着が弱い(これは引っ張りせん断の比較だが、剥離試験でも同じ傾向とのこと)。
ここから言えそうなのは、ゴムに接着が良いように手を加えられたウレタン系接着剤(UT110)が、ハル側(FRP)、ゴム側(セールドライブカバー)両方をバランスよく接着できそうだということ。
また、UT110のカタログには水没する用途はNGとの記載があるが、同社の速乾G(ボンドのG17に相当)よりは、断然耐水性が高いとのことだったので心配はなさそう。
結論として、できるだけコンサバにG17を置き換えたいなら、3MのSuper Weather Strip。セメダインさんを信じて人柱になってみるなら、UT110が良さそうに思える。
さて、どっちにしようかな。
実は勢いで両方ポッチ(ついでに#5200も)しちゃったので、もう少し悩んでみます(けど、実を言うと人柱になる方にかなり傾いている)。
【追記】
結局悩んだ末にUT110を採用。人柱長期テストに入ります。結果は乞うご期待!
【その後の状況】
2022年の状況はここ → https://yachtakane.com/archives/32539308-2.html
丸3年が経過したが、まったくはがれの徴候なし。これはなかなかのものです。
2023年の状況はここ → https://yachtakane.com/archives/36157612-2.html
丸4年が経過
【さらにその後の状況】
2024年3月の状況 → yachtakane.com/archives/上架整備2024.html
5年経過。ビクともしていません。
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