セイレーンの歌声

実はセイレーンの歌声を聴いたことがあるのを思い出した。

あれは去年小笠原へ行った時だ。クルーが3人で、4時間づつ3交替で2昼夜航走ったので、夜間当直は当然一人きりだ。ある日、闇夜の中をアビームで快走していた間じゅう、短い単調なメロディーが聞こえていた。単調だが単なるリズムではなく、確かにメロディーだった。

ホメロスのオデュッセウスにも出てくるセイレーンは、上半身が美女、下半身が鳥の怪物で、美しい歌声で船乗りを惑わせ、船を浅瀬に導いて難破させる。その伝説は船乗りなら知らないものはいない。けど、その時は全くそこに考えが至らなかった。まあ、夜中に一人でウォッチしていれば、空耳もあるよなあ。不思議なものだなあぐらいに思っていた。もし、その時にセイレーンの伝説を思い出していれば、金縛りになって本当にセイレーンの餌食になっていたのかも知れない。(下の写真は、「オデュッセウスとセイレーン」ハーバート・ジェームズ・ドレイパー作)

サイレンの語源でもあるセイレーンの歌声は(いずれもSirenという同じ綴りになる)、実は船体や帆装、機関を含む船のシステムに何らかの異常を生じている兆候だという説もある。石油化学プラントの運転員は、聞いたことのないメロディーが聞こえたら、すぐ上司に相談するように厳しく言いつけられているそうだ。

結果的に、ボクの船は何事もなく小笠原に到着したが、もし今度歌声が聞こえてきたら、どこかにトラブルの芽が隠れていないか、その場ですぐに調べてみないといけないと思っている。

 

【蛇足】
ちいかわに出てくるセイレーンちゃんは、人魚の姿ですが、これは後世になって人魚伝説とセイレーン伝説が融合してしまったということらしいです。自分はお姿を拝見する機会はなかったので、現代のセイレーンさんがどちらのお姿をされているのかはわかりません(できれば一生お会いしたくない)。

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