数日前にニュースで出ていた、商業帆船復活の話。
Sail Cargoというコスタリカの会社が、ホンモノの木造帆船を造って、商業輸送を始めるんだとか?
この写真はその一号船で、Ceiba号 全長 150ft(46m)3本マストのブリガンティン(フォアマストのみ横帆で、メインとミズンは縦帆)で、総トン数281トン。コスタリカからカナダへのコーヒー輸送を既に契約済みで、日本にも進出の機会をうかがっているとの事。(https://www.sailcargo.inc/en/vessel)
いやあ、本当にこういう船で商業輸送が始まったら夢のある話だなあと思う。
ただ、ちょっと気になったことがあって、この種の船を動かすのに、乗組員は何人必要なんだろうって事。実は、19世紀後半の帆船輸送華やかなりし頃の船員の労働条件は過酷としか言いようがなく、例えば、R. H. Dena の”Two Years before the Mast”(邦訳名: 帆船航海記)によると、Dena氏が最初に乗り込んだ米国籍のピルグリム号(2本マストのブリッグ、ブリッグはメンスル以外全て横帆)は、船長と航海士2名、ボーイとコックとカーペンターとセイルメーカーで4名、甲板員は8名、全部で僅か15名しか乗っていない。当直は4時間毎の2交代なので、ワッチに入らない船長、ボーイ、コックを除いて、片舷6人で、7枚の横帆と3枚の縦帆を操作する。一日最低12時間労働。実際には頻繁にオールハンズがかかるので、殆どまとまった睡眠時間は取れなかったらしい。
英国籍の例では、Sir James Bissetの”Sail Hoo”(邦訳名:セイル・ホー)で、Bisset船長が見習い士官として最初に乗り込んだカウンティ―オブペンブローグ号、全長221ft(67m)、1036トンの場合で、船長、航海士2名、ボーイとコックとカーペンターとセイルメーカーで4名、甲板員は12名、合計19名。これに見習い士官3名を加えて22名。片舷8-9名。但、こちらは3本マストのバークなので、横帆だけで10枚あるし、縦帆は最大12枚まで張れる。そもそも、航海士とクォーターマスターは持ち場を離れられないから、荒天でリーフ作業などが発生すると、当然オールハンズがかかって総がかりになる。
上のCeiba号は、船の要目によると、職員12名、トレイニー12名の合計24名と書いてある。トレイニ―の意味はよくわからないが、これを乗員にカウントしても、現在の標準である4時間オン/8時間オフの3交代なんて組めそうにない。本当に昔ながらの2直24時間をやるつもりなんだろうか?
因みに、日本の練習帆船である日本丸や海王丸の職員定数は59名(実習生120名を含まない)だという。これらは4本マストのバークで総トン数2570トン、3本のマストにかかる横帆だけでも15枚、縦帆は最大17枚ある大型船だとはいえ、今の基準では、昔と比べて乗員を倍ぐらい確保しないといけない感じだ。
商業帆船を復活させるのは、ロマンに満ちた素晴らしいプロジェクトだけれども、どうもこの乗員の確保(あるいは適法性)の部分で、結構難しい問題を抱えそうな気がしてならない。
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