ジブファーラーにCRCはご禁物!

「どうもファーラーの動きが渋いなあ。とりあえずCRCを吹いておこう」というのはいかにもありそうな話だが … それはやめておいた方が良さそうだ。

うちのマリーナで見る限り、ジブファーラーには、Selden(Furlex) を装着している船が一番多く、次いで Harken、たまに Facnor という感じだが、この3つのメーカーは、それぞれ別の理由で、自社の製品にCRC等の溶剤を使ったスプレー式潤滑剤を使用することは好ましくないと言っている。

1)  Selden(Furlex)の場合:

3つのうちではFurlexだけが、通常の鋼球のベアリングを採用しており、従って定期的給脂(グリースアップ)を必要としている。下記のように数ヶ所の給脂口からグリースを注入する。

何年も給脂を怠って放っておくと、グリースが固まって回転が渋くなる。そこでCRC等のスプレー潤滑剤を吹いてやると、その場では確かに回転がスムーズになるが、何回もこれを繰り返すとグリースが流れてしまい、潤滑不良が発生してしまうのだ。これは、ウインチにも共通なので、知っておいた方が良い。手間はかかるが、数年に一度はきちんと給脂してやること。グリースには上質のグリース(メーカーはSeldenのウインチグリースを推奨)を使うことが重要だ。

2) Harkenの場合:

皆さんご存知のように、Harkenのベアリングはデルリン製(ポリアセタール樹脂)だ。この樹脂製ベアリングはほとんど潤滑剤を必要としない。従って、マニュアルにも、潮噛みなどを防ぐため、洗剤で良く洗って下さいとだけ指示されている。

なお、潤滑が必要になった場合、唯一、McLube One Dropというフッ素系の専用潤滑剤のみ、使用することが許されている(スプレー式のMcLube SailKoteの使用可否は不明)。これの代わりにCRC等を吹くのは絶対にやめた方が良い。CRC等に含まれている鉱物油がデルリンを劣化させて、最悪ベアリングがボロボロになって割れてしまうのだ。

3) Facnorの場合

Facnorのマニュアルにも、給脂は不要で、水洗いだけで良いと書かれている。Facnorの場合は、SeldenともHarkenとも違い、通常の鋼球のベアリングを採用しつつ、ベアリングボックスを完全に密閉(シール)してメンテナンスフリーを実現しているようだ。

この場合、CRC等のスプレー潤滑剤は百害あって一利なしとなる。そもそも、ベアリングには到達できないのだから意味が無いし、ベアリングボックスを守るシール材には、通常、合成樹脂かゴム製のものを使うからCRC等はこれを劣化させる原因となる。

以上、3つのメーカーが、それぞれ異なった構造を採用している事も興味深いが、いずれのケースでも「鉱物油を含んだCRC等の潤滑スプレーは禁忌」という点では共通しているのが面白い。

こう言うと、溶剤を含まないシリコンルブなら大丈夫なんじゃないかとか、いつもCRCを吹いているけど、これまでトラブったこと無いよとか言う人が必ず出てくる。1回や2回でいきなり壊れるわけじゃないと思うし、自己責任で使う分には他人が口出しすべきことではないが、まあマニュアル通りにメンテするのが無難と言うものでしょうな。

コメント

  1. O川 より:

    あの洗油シリーズは呉工業の当時の住所が製品名になっているというトリビアも(聞きかじりなので真偽は不明)。

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