もう何十年も疑問に思っている2つの事。
- エンジンオイルは買い溜めして置いておくと劣化するのか?
- マリン用のオイルを選ぶ必要はあるか?
これらは、いずれもネットで検索しても信頼できる情報がほとんど出てこない。
まず、エンジンオイルの消費期限の件。うちのボルボペンタMD2030-Dの潤滑油容量は3.5Lだが、例えばボルボの純正オイルだと4Lボトルは13,500円、20L缶なら29,700円だから、1L当たりの価格は2倍強になる。これだけ価格差があると、20L缶を買い置きして、3-4年かけて使いたくなるのが人情だ。(ギヤオイルにも使うので、使い切るのに5年はかからない)
そこで、Googleさんに消費期限について聞くと、AIがネット情報を集めて、開封前で3-5年、開封したら2年以内というような答えを探してくる。
しかし、それを誰が言っているのか?ということをもう少し深掘っていくと、明らかな傾向が出てきて、「開封後は2年以内」という情報の発信は、ほぼ潤滑油の販売店(オートバックスなど)に限られてくるのだ。一方、一般人がYahoo知恵袋や、Quoraに答えている内容は、「もっと保つ」、「長年置いても劣化しない」、「使っているけど問題なんか起こしたことはない」というものが圧倒的に多い。
もちろんこういうコメントには、単なる知ったかぶりが相当数混じっているのだが、根拠として、エンジンオイルは、運転中のエンジン内で100度近辺にまで温度が上がる環境下で、1年間ぐらいは保つように作られているのに、常温でそう簡単に酸化するわけがないじゃないか?という事が挙げられていて、これにはかなり納得性が高い。
それと、日本のサイトだけではなく、英語圏のサイトもできる限り当たってみたのだが、この問題について、潤滑油のメーカーやエンジンのメーカーのコメントが全く見当たらないのだ。もし、長期保存された潤滑油の劣化によりエンジンが問題を起こすならば、潤滑油やエンジンのメーカーから、もっと注意喚起などが行われるだろうと思うのである。
ちなみに、自動車メーカーによるエンジンオイルの推奨交換周期は15,000km又は1年というのが多いが、販売店の発信する情報では、短周期でどんどん交換すべきとするものもある。販売店のいう2年以内というのは話半分に聞いておいても良さそうだ。
というわけで、皆さんにお勧めするわけでは無いが、自分の場合は、20L缶で買い溜めして使っている。
次にマリン用のオイルである必要があるかという問題。
まず、オイルが純正である必要があるかという命題については、「粘度規格と品質規格に合致していれば、必ずしも必要ない」というのが通説だ。しかし、具体的にどのオイルを使えば良いのか?ということになると、なかなか悩みが多い。
ボルボペンタの「現行の」純正オイルの規格は、ボルボ独自規格のVDS-4.5。これはAPIでいうとCK-4、日本のJASOのDH-2などの規格を包含した高い基準だということで、懐に余裕のある人は安心料としてお支払いしておいてきっと損は無い。が、しかしお値段の事を考えると、国産のEneosの潤滑油の値段はボルボの半分以下。どうしても、そちらを考えてみたくなる(ボルボの5L買いとエネオスマリンFの20L買いの値段差は4倍になる)。
そもそも、うちのエンジンは20年前に農業用トラクターのエンジンとして開発されたもの。マニュアルによると、要求するオイルの性状が、粘度基準SAE 15W-40というのは良いとして、API品質規格ではCD又はCF、Volvoの規格ではVDS又はVDS-2。現在の規格の前の前の前ぐらいの規格だ。
しかも、これらの規格が何故このようにアップグレードされてきたかというと、主に省エネと排ガス規制によるものだ。
例えば、APIがCF-4、JASOがDH-1という規格を作成したのはコモンレール対応、次にAPIがCK-4、JASOがHD-2を作成したのはDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)対応のため。
うちのMD2030のように、コモンレールどころか、過給機もついていないような単純明快なエンジンでは、これらの規格に準拠している意味は限りなく低いのではなかろうか?
一方、マリン用のディーゼルオイルは何が違うのか?下の表をご覧いただきたい。Eneosさんは、製品毎の性状をきちんと公表してくれている。これは他社にも見習ってほしい。VolvoもYanmarも全く情報が取れなかった。

EneosのCK-4/DH-2(カラムの後ろから2番目)はVolvoのVDS-4.5認証油、DH-2/CL-4はその一つ前の規格。いずれも、主な用途はトラック・バス用だ。一方、マリン用として売られているEneosのマリンFやJF全魚連のギョレンオイル大漁スーパーは、他の製品に比べて塩基価が高い。
塩基価というのは、簡単に言うとアルカリ性の強さで、燃料が燃えるときに発生する硫黄酸化物や窒素酸化物が酸性なので、ディーゼルオイルはこれを中和するためにアルカリ性に調整されている。マリン用オイルの塩基価が高いのは、漁船が燃料にA重油も使うので(硫黄分が最大で0.5%、残渣分も軽油より多い)、それに対応するためだと思われるが、我々がヨットの補機に使う軽油は自動車用と同じもので、実質的に硫黄フリー(硫黄含有率が10ppm以下)だから、もし塩基価だけの問題なら、マリン用である必要はなさそうだ。ただ、マリン用には、水分離性や防錆効果を高める添加剤が含まれているという説はある。
一方で、EneosのCK-4/DH-2の宣伝には、「DPFの目詰まりを防ぐため、硫酸灰分(アッシュ)を低減する」と書いてあり、うちはDPFとは縁が無いが、ミキシングエルボーに付着するアッシュが減るなら、ありがたいなあという気もする。
補機にボルボペンタが載っている船に乗り換えてから11年間。これまで、最初に買ったのはボルボ純正のマリンオイルだったが、次とその次はエネオスマリンF(いずれも20L缶)だった。今のところエンジンは好調なので、余計な事はしない方が良いとは思いつつ、本当にエルボーの汚れが軽減されるなら最新規格のオイルも捨て難いところではある(値段差はあるが、ボルボの純正オイルと比べれば大したことないので)。
まあ、いずれにしても、米国が余計なことをするおかげて、今はどこにもエンジンオイルを売ってないし(結構深刻かも)、先日交換を済ませたばかりだから、来年までじっくり考えてみようと思う。

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