小笠原 – 行きは良い良い、帰りは・・・

往路はすごく順調だったんですよ。須磨から八丈島神湊まで約300マイルを50時間(平均6kt)、神湊から父島二見港まで約400マイルを71時間(平均5.6kt)。これは、孀婦岩を見るために時間調整したり日の出を待ったりしたのも含んでますからかなり良いペースです。

この勢いで、帰りは真っ直ぐ串本まで500マイル直行のつもりで二見港を出たのですが…

5月2日に父島を出港してから、須磨までなんと13日間もかかってしまいました(そのうち航海日数は9日だけで、あとは修理と風待ちです)

直帰のつもりが神湊に行き先変更
出港した日、午前中は8-10m/sぐらいの風をクォーターリーに受けて、ワンポイント程度にリーフ(ブームファーラーなので無段階)したメインに90%のワーキングジブで快走してました。それがお昼過ぎからどんどん噴き上がってきて、ツーポン相当、スリーポン相当まで行ってもまだブローチングしてブームが水をすくうような状況になり、最大60度ぐらいの傾斜の中で決死のリーフ作業。まずジブを半分詰め、メインもスナイプのメインぐらいの大きさにしてやっと安定しました。ピーク時は風速計が55ktを差してたのですが、まあそれはメーターが甘いとして、確実に40kt(20m/s)は超えてましたね。波頭が完全に吹き飛んで海面が砂嵐みたいになっていましたから。

嵐は夜半まで続き、日付が変わる頃に風はやっと収まりました。翌朝、かなり強引に巻いたジブとメインのリーフが解けるかどうか心配したものの、そこは無事にリーフが解け、夕方になって、明るいうちにワンポイントだけ入れておこうとしたらブームの動きがおかしい。よく見るとブームのグースネック部分と本体を繋ぐリベットが5本全部吹っ飛んでしまってブームがバラバラになる寸前でした。

慌ててメインを引き下ろし、「一番近い港はどこかな?」、「多分神湊やね」、「何マイル?」、「220マイルぐらい」。あっさり言うなよ、220マイルって2昼夜かかるやん!とはいえ、他に手はないので神湊に行き先変更しました。

変針点から神湊までの220マイル、ここをジブとエンジンだけで48時間(平均4.8kt)はまずまずのパフォーマンス。初日は、8−10m/sの風をアビームに受けてジブとエンジン半速で快調に航走っていたのですが、2日目から風がどんどん前に回りジブが使えなくなり、最後の12時間ほどはベアポールで、波にバンバン叩かれながら真っ直ぐ風上に機走するしかなくなり、結構タフでした。

再度下田に行き先変更
ブームは、手持ちの部品と工具であっさり直し、さあ帰るぞってところで、ビルジに大量の軽油を発見。これが汲んでも汲んでもどこかから出てきます。燃料タンクの下は乾いていてここではない。エンジン周りには別のビルジ溜まりがあり、そちらに漏れた痕跡が無いのでそこでもない。となると、床下を通っていて全くアクセスできない燃料配管から漏れているのか?これはプロに見てもらわないと手のつけようがない。やむなし、寄り道して下田へ行くことに。

配管からの漏れである可能性も考えて燃料タンクのコックはオフ。つまり出入港以外エンジンは使えない純帆走で下田を目指すのですが、風向きが悪く2日間の風待ちの後、5月7日16:15に神湊出港。途中無風に捕まって2時間浮いていたり、その後は北東の風が吹き上がるなか、波をざぶざぶ被ってクローズホールドで10時間とか。まあ結構大変でしたけど、無事下田に到着しました。

その日のうちに、知る人ぞ知るヒロリギングの廣田さんが横須賀から駆けつけてくれて、ファイバースコープを使って1時間以上丹念に漏洩箇所を探索したものの、「全部辿ったけど、どこも漏れてないよ」、「ん?この辺匂わない?」と開けてみた、エンジンより後ろで燃料配管もビルジも通らない独立した区画に、軽油がチャポチャポ溜まってました。「犯人はお前だ!」

これは、例の嵐の日に、後部コックピットロッカー内の、クォードラント(ラダー駆動のための1/4円弧の部品)の保護を兼ねた木製の棚が崩壊してバラバラになり、軽油缶を含む中のものが散乱するという事件(!)があり、その時に漏れた軽油が、動揺のために隔壁を超えて独立した区画に溜まり、さらにそれが、揺れるたびにちょっとづつ出て来ているという事だったとわかりました。

実はそれは最初に疑った事ではあるのですが、ビルジはコックピットロッカーからは配管を通ってダイレクトにビルジだまりに落ちてくるので、まさかビルジの配管がスルーしている区画に軽油が溜まっているなんて思いもしませんでした。まあそのぐらい揺れてたって事かと。

軽油は全て汲み取って、マイペットで綺麗に拭き取り掃除をして、さあいよいよ須磨へ向けて最後のレグって事なんですが、その日以降、連日真西の強風が吹き荒れて、さらに3日間も下田で足止めを食ってしまう結果となりました。

やっと最終レグ
5月12日はまだ西風でしたが、夜半に北西に変わるという予報を信じて出港、作戦としては当面セーリングは諦めて、黒潮本流を避けて岸にへばりついて真西へ機走、風が北に変わったところでセールを上げて一気に串本へ南下というもの。神子元から御前崎までの36Mを7.5hで、平均4.8ktはまずまずですが、御前崎から浜松沖まで38Mは12hかかって平均3.2kt。この辺りは、向かい風、向かい波、向かい潮の三重苦、岸を離れると強烈な黒潮に押し戻されるので、ともかく岸にへばりついて風が振れるのを待つしかなく、一種のヒーブツーと割り切ってました。

13日02:15 ついに北東から待望の風が来てセイルオン、転針して串本沖を目指します。黒潮は、串本沖から下田沖へ流れる本流の他に岸よりを北上する支流があり、どうあがいても逆潮という状況なのですが、Windyの潮流情報によると、串本沖から安乗沖にかけて本支流の間にどうも空隙地帯があるようで、そこに突入してみたところ、何と0.1 – 0.5ktの連れ潮になっていました。これは奇跡的。

この後、夕暮れに潮岬、夜明けに日ノ岬と順調に進み、8:00ごろ友ヶ島を抜けて、11:30に無事須磨ヨットハーバーに帰着しました。〆てみると下田から須磨まで290Mを53h、平均5.5ktはなかなかのパフォーマンスです。

結局帳尻が合ってしまうようですね。往きがあまりに順調だった分、帰りでお返ししちゃったし、最終レグも平均3.2ktで12時間波に叩かれていた時はどうなる事かと思いましたが、結局はその後全部取り返した感じだし…

まあ人生そんなもんかな?

 

【6月14日追記】

訂正します。コックピットロッカーのビルジは、ロッカーの一つ前の区画に溜まって、どこへも行かないと言うことがわかってしまいました。詳しいことは後日書きますが、とりあえず訂正。

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