佐渡島で二種類の和船をお勉強

しばらく一人で遊び回っていたので、家内のご機嫌取りを兼ねてまだ行ったことのなかった佐渡島へ行ってきました。もちろん自分の船じゃなくて飛行機と高速船です。

佐渡といえば、まず金山が思い浮かぶのですが、島の南西部に位置する小木港は北前船の重要な寄港地であり、宿根木地区には、北前船の船主や船大工、船員、船用品の供給者など、関連する人と産業が集積して一つのエコシステムができていたという事です。小木民俗博物館には、160年前に当地で建造された五百石積みの弁財船を当時の図面を元に忠実に復元した「白山丸」が展示されていました。

復元和船としては、大阪の「浪華丸」や青森の「みちのく丸」が有名ですが、常設展示で、建屋の中で大切に保管されている「白山丸」は一番程度が良いのではないかと思います。構造や材質、艤装についての説明も充実していました。

上のカットモデルでは、構造と材質が説明されています。前後に配置される、航(かわら、キールに相当)は腐りにくい松材。水押(みよし、ステム材)は強い欅、上下2段配置される船梁(ふなばり、ビームに相当)も松材、加敷(かじき、キールの側面を補強)、棚(たな、船殻材)およびマストは軽くて強い杉材と、三種類の木材を用途に合わせて上手に組み合わせてあることがわかります。

これは引き上げ式の巨大な舵。深いキールのない和船は、リーウェイ抑制のためにどんどん舵の面積が大きくなったのですが、この舵は舵軸を舵面中程に移動して、現代風のバランストラダーになっていることがわかります。巨大な舵を、さほど長くない(と言っても5m以上ありそうでしたが)ティラーで操作するのは大変だったろうと思いましたが、その手があったかって感じです。

これは後部キャビンに配置された2つのろくろ(キャプスタン)。この四角い穴に軸棒を入れて4人で回します。この装置は画期的だったようで、巨大な一本マストを起倒する際、錨の上げ下げ、重量物の積み下ろしなどに活躍したそう。

これは前部船倉の様子。右側に写っているのは、マストステップです。弁財船は巨大な一本マストが、キールステップされていますが(スルーデッキマスト)、シュラウド(サイドステー)がありません。この構造物だけで横方向の力に耐えているので、相当頑丈に作られています。

ぶっといマスト。これをどうやって立てるのかというと…

一旦後ろへずらしてから、マストステップのケースに滑り落とし、あとは例のキャプスタンで巻き上げて立てるんですね。

いろいろ面白くて展示を離れられませんでした。観光客がバスで何組もやってきては帰っていく間ずっと展示にへばりついていて、家内も呆れてました。

ところで、もう一つ、小木港には興味深い和船が展示されています。

こちらは昭和36年まで現役で運行されていたという「幸丸」。ご覧の通り3本マストのガフスクーナーですが、船体をみると明らかに和船です。

野本先生の「春一番」みたいに上部構造を和船風にしつらえたと言うのではありません。これは構造的に和船のままの船体に、洋式帆装を施したものです。舵は和船独特の引き上げ式。

昭和の中頃まで、この形の和洋折衷船は、各地で現役で活躍していたようで、この船は、直江津-小木間38マイルを最短4時間で運行していたと言いますから、8kt超えでぶっ飛んでいたと言う事ですよね。この船も古びてはいるが、浮かべれば今すぐにも走り出しそうな感じでした。

佐渡島、金山も面白かったし、海の幸も堪能させていただきましたが、この2つは格別。もし行かれる機会があればお見逃しのないよう。

コメント

  1. O川 より:

    このろくろの軸受けの構造が気になりますねぇ。
    普通に木部に穴の凹みをつけてそこに突っ込んでいただけなのか?それなら上はどんな感じで?とか。
    もしや荒縄に油を染み込ませて、それをベアリングとして使っていた?とか。
    今となっては詳細の不明なロストテクノロジーなのかもしれませんが。

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