ボラードのお作法

寄港先で船を係船する場合、陸上のボラード(注)にもやいを取ることがあると思うが、これには決まったお作法(シーマンシップ)があるので書いてみたい。

最初に基本の「き」のさらに一歩手前から
ボラードにロープを結ぶ際に、とっくり結びなどをしてボラードを一人で占拠してはいけない。ロープのエンドにアイスプライスが無ければ、少し大きめのもやい結びをして輪っかを引っ掛ける。理由は後で説明する。なお、ロープの長さは船の側で調整する。長いロープが岸壁にあると足が引っかかって他人の邪魔になるし、ロープも踏まれて痛む。

では基本から
ボラードにロープを掛けようとしたら、先客がいてロープが掛かっていた場合どうするか?
写真1-(1)のように、単純に上から掛けるのはNG。先にロープを掛けた人が外そうとすると、1-(2)のようにロープが絡まってしまう。正しくは、1-(3)のように、先の人の輪っかを下からくぐらせて、1-(4)のようにボラードに掛ける。

こうしておけば、2-(1)のように、先の人はあっさりロープを外せるし、自分が先に出る場合でも、2-(2)のように、相手のロープを外さずに出ていくことができる。

ここから応用
ところで、2-(3)のように、先客が複数いたらどうするのか?
その場合でも、先の2人が正しくロープを掛けていれば、2-(4)のように一番下から順々に相手の輪っかを下からくぐらせていけば良い。
実は、これはロープが何本に増えても有効で、最初の人から順に正しくロープを掛けてあれば、ロープは何本取っても大丈夫だ。3-(2)は、既に3本掛かっているところに、下からロープを入れてみたところ。
試しに4本のロープが掛かっている 3-(3)の状態から、最初から2番目のロープを引っこ抜いてみたのが 3-(4)で、どのロープにも絡まずちゃんと抜ける。

現実的な対応
とは言うものの、実際にはなかなかお作法を守って貰えないことも多い。学ぶ気が無いのか、教えて貰う機会が無いのか知らないけど、来た順番に上からロープを掛けていたり、ロープをぐるぐるボラードに巻き付けて占拠したりする人はいる。

例えば 4-(1) や 4-(2) のようなケースに遭遇したらどう対処するのが良いか?
本当は優しく教えてあげるのが良いのだろうが、そういう輩は素直に聞く耳を持たず、怖い顔で睨み返してきたりするので、あまり関わりたくない。
そこで、余計なことはせずに、4-(3)のように全てのロープの一番下を通して、4-(4)のようにもやい結びをして繋ぐのが良いのではないかと思う。
これなら、自分が先に出る場合には、もやい結びをほどけば良い訳だし、出て行く順番によっては先客二人の間で諍いが起こりそうな気がするが、そんな事は知ったことじゃない。少なくとも、自分のもやいを勝手に解かれるようなことはないだろう。

終わりに
この種のシーマンシップは、ルールやマナーの要素もあるけれど、それ以上に、ボラードにはもやい結びを作って掛けてある方が、ぐるぐる巻きにしてロープの端が散乱しているより全然スマートでカッコ良く見えませんか?ヨット乗りは見栄っ張りだからそういう要素も結構重要だと思いますよ。

(了)

(注)
係船柱のうち、どれをビットと呼びどれをボラードと呼ぶかについて、一般的には、係船柱全般をボラード(Bollard)と呼び、そのうち主に船上に設置される2本の係船柱を縦に並べた形状のものをビット(Bitts 通常は複数形)と呼ぶと思われるが、本稿では、広義のボラードとして、ビットもボラードも写真で使ったクロスビットも全部ひっくるめてボラードと呼ぶことにするので、ご了承いただきたい。

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