ヨットの上のジゴクの話

バッテリーのリチウム化計画が、注文した資材の到着待ちなどで進んでいないので、とりあえず今週はヨットの上のジゴクの話でもしてみよう。

どうもヨット界隈というよりは建設業の界隈の業界用語で、ジゴクと呼ばれているものがあって、どこからも全くアクセスできない空隙のことを言うらしい。例えば、この中空構造のビーム。叩いてみると中が空洞であることがわかるが、完全な密室で光も差し込まない、真っ暗闇の空間だから地獄が連想されての命名だろう。

一方、厳密にはジゴクではないのだが、船の中にはどこからも手の届かない「ほぼジゴク」の区画がたくさんある。

例えば、エンジンルームやヘッド(トイレ)の床とハルの間の空間などがそうで、どこからもアクセスできない場所だが、まだそれらの区画はメインのビルジ溜まりと繋がっているので、ビルジが溜まって抜けないなどという事はない。

問題なのは、ほぼジゴクなんだけど、完全に密閉されているわけでもなく、リンバーホール(水抜き穴)もないという、厄介な場所があることだ。

写真は、船体後部のクォーターバースの床下。これらの区画は、ちゃんと開口部があるからジゴクではないのだが、①と②については、ねじ止めしてある最後部(写真では上)の床板を取り外しても、区画の最前端(写真では下端)には手が届かない。しかも、信じられないことに、アフトコックピットロッカーに入った水はそのまま流れてきて、そこ(①と③、②と④の間)に溜まってしまうのだ。

①と③、②と④を隔てるバルクヘッドには配管を通すための穴が空いているので、ビルジは無限に溜まり続けることはないが、床から5cmぐらいは溜まったまま抜けない。さらに、③と④にもリンバーホールがないので、これらにも配管穴までの5cmほどのビルジが溜まったままとなる。

以前コックピットロッカーの中に軽油を大量にこぼしてえらい目に遭った事を書いたが(https://bit.ly/43JwJkn)、軽油が数センチずつこれら全ての区画に溜まり、それが船が揺れる度に少しづつメインのビルジに落ちてくるため(⑥、⑦経由)、ビルジには常に油が混ざり、船内には軽油の匂いが充満するという、また別の意味で一種の地獄になってしまった。

そこでこれらの区画にビルジが溜まったままにならないようにしたいのだが、リンバーホールを船底スレスレに開けるのは、船が出来上がってしまってからでは難しい。出来ることといえば、コックピットロッカーの中に、できる限り海水や他の液体をこぼさないようにすることと、定期的にこれらの区画にビルジが溜まっていないか点検するぐらいしかないと思う。そのために、せめて手が入るように点検口を開けてみた。

とはいえ、頻繁に点検しようと思えば、すぐに点検口にアクセスできるようにクォーターバースに物を置かないようにしないといけないのだが、それがそう簡単ではないので、結局この区画の「ほぼ地獄」状態はあまり改善しないような気がする。

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